こんにちは。ことは音、運営者のことはです。
チェロの松脂って、種類が多すぎてどれを選べばいいか迷ってしまいませんか?ライトとダークの違いや、チェロ専用じゃないとダメなのか、アレルギーが心配なときはどうすればいいかなど、気になることが多いですよね。また、正しい塗り方や塗布する頻度、寿命の目安、さらには割れた松脂の再利用法についても知っておきたいところです。
この記事では、チェロの松脂の選び方からおすすめのブランド、そして日々のメンテナンス方法まで、詳しく解説していきます。お気に入りの松脂を見つけて、もっとチェロの演奏を楽しんでいきましょう。
- チェロにおける松脂の役割と、ライト系・ダーク系の特性の違い
- バイオリン用をあえてチェロに使う理由やおすすめのブランド
- アレルギー対応の最新松脂と、正しい塗り方や塗布する頻度
- 寿命の目安や割れた松脂の直し方など総合的な手入れ方法
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チェロの松脂の選び方と基礎知識
まずは、チェロの松脂に関する基本的な役割や、自分に合った選び方について見ていきましょう。ここを知るだけで、演奏のしやすさや音色が大きく変わるかもしれませんよ。
チェロにおける松脂の役割と違い

チェロは、弓の毛で弦をこすって音を出す「擦弦楽器」というグループに属しています。ですが、実は馬の尻尾の毛で作られた弓の毛だけでは、ツルツルと滑ってしまって、あの太くて張りの強いチェロの弦をしっかりと連続して鳴らすことは物理的に不可能です。松脂を塗り忘れて弾いてしまい、「スカッ」と空振りしたような感触に焦った経験がある方も多いのではないでしょうか。
そこで絶対に欠かせないのが松脂(ロジン)の存在です。弓の毛に松脂を擦り付けると、毛の表面にある無数の微細なキューティクルに細かい松脂の粒子が入り込み、薄くて粘り気のある層が形成されます。この粘着層がチェロの弦をギュッとキャッチ(スティック)し、弓を動かす力で弦が限界まで引っ張られた瞬間にパッと離す(スリップ)という動作を連続して引き起こします。専門用語では「スティック・スリップ現象(ヘルムホルツ運動)」と呼ばれるのですが、この規則的で連続的な摩擦のコントロールこそが、チェロ特有の深く豊かな倍音を生み出す源なんですね。
特にバイオリンやビオラ(中音域を担当する楽器)と比べて、チェロの弦は非常に太く、大きな質量と強い張力を持っています。そのため、発音させるには弓から弦へ、より大きなエネルギーを伝えなければなりません。つまり、チェロ奏者にとって松脂を選ぶということは、単なる消耗品のお買い物ではなく、楽器のレスポンスや音色、さらには「弾きやすさ(右手の疲れにくさ)」を根本から左右するとても重要なプロセスだと言えます。自分のプレイスタイルに合った松脂を見つけることで、無駄な力が抜け、演奏の質が劇的に向上する可能性を秘めているんです。
チェロは他の弦楽器よりも弦が太いため、松脂の「引っかかり具合(摩擦力)」が音の立ち上がりにダイレクトに影響します。ご自身の右手の重さやボウイングの癖にぴったり合う松脂を見つけることが、上達への近道になるかもしれません。
松脂のライトとダークの特性と比較

松脂を選ぶときに、まず一番最初にぶつかる疑問が「ライト系」と「ダーク系」の違いかなと思います。松脂は主に松科の樹木から採取された樹脂を加熱・精製して作られるのですが、その精製温度や時間、さらにブレンドされる成分によって、性質がガラリと変わるんです。
以下の表で、それぞれの基本的な特性を比較してみましょう。
| 特性・要因 | ライト系(Light / Amber) | ダーク系(Dark / Green, Black) |
|---|---|---|
| 視覚的特徴 | 琥珀色、黄金色、透明感がある | 黒褐色、濃い緑色、不透明 |
| 物理的特性 | 硬度が高い・粘度が低い(サラサラ) | 硬度が低い・粘度が高い(ベタベタ) |
| 音響的プロファイル | クリア、軽快、立ち上がりが鋭い | 重厚、太い音、密着感が強い |
| 最適な湿度環境 | 高湿度環境(梅雨、夏季など) | 低湿度環境(冬季、乾燥地帯など) |
| 推奨される演奏スタイル | ソロ、室内楽、精密なボウイング | オーケストラ、力強い発音が必要な楽曲 |
ライト系松脂の魅力と活躍するシーン
ライト系の松脂は、一般的に製造工程での加熱時間が短めで不純物が少ないため、美しい琥珀色や透明感のある黄金色をしています。触ってみると物理的に硬く、粘度が低いため、サラッとした弾き心地が特徴です。摩擦の立ち上がりがとても鋭く、雑音(ノイズ)の少ないクリアで純粋な音色を引き出すのが得意ですね。高音域での抜けが良いので、ソリストが軽快なパッセージを弾く際や、室内楽などで繊細な表現が求められる場面にぴったりです。
また、日本のジメジメした梅雨や夏の季節には、松脂が空気中の水分を吸ってベタつきやすくなりますが、もともとサラサラしているライト系を使うことで、弦への過剰な引っかかりを防ぎ、快適な弾き心地をキープすることができます。
ダーク系松脂がもたらす重厚な響き
一方のダーク系松脂は、黒褐色や濃い緑色をしていて、精製時にじっくりと時間をかけて加熱されたり、特定のオイル成分がブレンドされたりしています。最大の特徴は、柔らかくて粘度が高い(ベタベタしている)こと。弦への密着度が非常に強いため、チェロのC線やG線といった低音域をしっかりと、太く芯のある音で鳴らしたい時に絶大な威力を発揮します。フルオーケストラの中で圧倒的な音量が求められる場面では、とても頼りになる存在ですね。
空気が乾燥する冬場は、弓の毛から水分が奪われて摩擦力が落ち、音が上滑りしやすくなりますが、ダーク系の強い粘り気がそれを補ってくれます。プロの奏者の中には、季節やホールの空調に合わせてライトとダークを意図的に使い分ける方もたくさんいらっしゃいますよ。
バイオリン用松脂をチェロに使う理由

「自分はチェロを弾くのだから、パッケージに『チェロ専用』や『チェロ・コントラバス兼用』と書いてある松脂を選ばなくちゃ!」と、無意識に思い込んでいませんか?実は、ここに松脂選びのちょっとしたパラドックスが隠されているんです。論理的に考えれば、チェロは太い弦を持っているので、強い引っかかりを求めて粘度の高いチェロ用・バス兼用を選ぶのが正解に思えますよね。
しかし、実際の演奏現場や専門家の間では、これが必ずしも最適解とはならないことが多く実証されています。というのも、チェロ・コントラバス兼用のダーク系松脂は、コントラバスのような極めて太く長い弦を強引に揺らすための、強烈な粘着力を持たせて作られています。これをチェロの弦に使ってしまうと、弦が振動しようとする力を松脂の粘りが物理的に阻害してしまい、過剰なダンピング(減衰)効果が働いてしまうんです。結果として、音が「潰れた」ように聞こえたり、ザラザラとした耳障りなノイズが混じったりする原因になりかねません。
そのため、演奏の細かいニュアンスを繊細にコントロールしたい奏者の間では、あえて「バイオリン/ビオラ/チェロ兼用」と表記されているライト系の松脂を選ぶアプローチが強く推奨されているんです。例えば、イギリスの伝統的な松脂である「Hill(ヒル)」のライトタイプ(バイオリン用)などはその筆頭ですね。これを使うことで、チェロ本来の深みのある音色を保ちながらも、左手の運指にピタッとついてくる素早い弓のレスポンスと、透明感のある発音を手に入れることができます。
初級者のうちは、あまり極端な特性を持たないスタンダードな松脂で弓の圧力やスピードの基礎を学ぶのが一番です。しかし、中級者・上級者へとステップアップし、スピッカート(飛ばし弓)のような高度な技術を習得し始めると、「もっと軽快に弓を切り返したい」といった要求が出てくるはずです。そんな時は、ぜひバイオリン用のライト系松脂のポテンシャルを試してみてくださいね。
チェロの松脂でおすすめのブランド
市場には星の数ほどの松脂が存在しますが、プロフェッショナルなチェロ奏者からも長年愛され、高く評価されている代表的なブランドには、それぞれ明確な個性と音響的な哲学があります。ご自身のプレイスタイルや出したい音色に合わせて選ぶための、強力な選択肢をご紹介します。
ギオーム (Guillaume)
レトロでお洒落な丸いアルミ缶に入っているのが特徴的で、ケースを開けるのが楽しみになる松脂です。比較的価格が抑えられているにもかかわらず、極めて綺麗な音が出やすいと評判です。弾き心地が非常に滑らかで、引っかかりと抜けのバランスが絶妙。「一度使うと手放せなくなるほどラブリーな使用感」と評する奏者もいるほどです。ソロ演奏はもちろん、ジャンルを問わないオールラウンドな使用に向いています。
リーベンツェラー (Liebenzeller)
金属粉(金、銀、銅、さらには隕石など!)を配合するという、独自の神秘的な製法で作られていることで有名なブランドです。この金属成分のおかげか、非常に透明感があり、上品でキラキラとした響きを引き出すことに長けています。特にモーツァルトなどの古典派の楽曲を演奏する際に要求される、軽快で洗練されたアーティキュレーションにとても適しています。硬さのバリエーション(数字で表記)も豊富なので、季節ごとに細かく合わせられるのも嬉しいポイントですね。
ピラストロ (Pirastro) / ハイダージン (Hidersine)
ドイツの老舗弦メーカーであるピラストロや、イギリスの伝統的なハイダージンは、弦に対する確実で力強いグリップ力を提供してくれる安心のブランドです。特に「オリーブ」や「シュヴァルツ」などは定番中の定番ですね。フルオーケストラでの演奏で、とにかく芯のある強い音や、ホールに響き渡る圧倒的な音量を必要とする場面で、その真価を存分に発揮してくれます。オーソドックスでハズレのない選択肢と言えます。
ヒル (W.E. Hill & Sons)
イギリス製の伝統的かつ、世界的な標準とされている松脂です。前述した通り、特に「ライトタイプ」は不純物が少なく、シルキーで非常に滑らかな弾き心地を提供してくれます。バイオリン奏者のみならず、高いレスポンスとクリアで雑音のない音色を好むチェロ奏者にも強く推奨される逸品です。
松脂の特性は絶対的なものではありません。お使いのチェロの個体差、弦の種類(スチール弦かガット弦か)、弓の毛の質(モンゴル産かシベリア産か)、そして何よりご自身の右手の重さのかけ方との複雑な掛け算で最終的な音色が決定されます。ぜひ色々なブランドを弾き比べて、ベストパートナーを見つけてみてください。
アレルギー対応のチェロ用松脂とは
チェロをはじめとする弦楽器奏者にとって、深刻な職業上の健康リスクとなり得るのが「松脂アレルギー(接触性皮膚炎や呼吸器系のアレルギー)」の問題です。実は長年、この問題は多くの奏者を密かに苦しめ、最悪の場合は大好きな楽器の演奏自体を断念させる原因にすらなってきました。
天然の松脂の主成分は「アビエチン酸」などの樹脂酸(コロフォニー)です。弓を動かして弦を擦るたびに、この松脂は微細な粉末となって空気中にフワッと飛散します。それが奏者の顔や目、鼻の粘膜、あるいは指先に直接触れ続けることで、免疫システムが過剰に反応してしまうようになるんですね。具体的な症状としては、弾いている最中や直後に起こる目の猛烈な痒み、充血、皮膚の赤みや発疹、さらには喘息のような咳や息苦しさなどが挙げられます。これらの症状が出てしまうと、演奏の集中力は削がれ、純粋に音楽を楽しむことなど到底できなくなってしまいます。
以前から、このアレルギーに悩む奏者のための「代替品」としての合成松脂は存在していました。しかし、一昔前の製品は、弾いた際の「音のザラつき(ノイズ)」がかなり目立ったり、楽器のニス表面に粉がベタベタと張り付いて掃除が極端に困難になったりと、音色や使い勝手の面で大きな妥協を強いられるのが実情でした。
ところが近年の材料工学の発展により、この状況は劇的に改善されました。その最大のブレイクスルーと言えるのが、アメリカのダダリオ(D’Addario)社から発売された「Clarity Hypoallergenic Rosin(クラリティ)/品番:9250-EA」です。この製品は、アレルギーの原因となる天然の松脂成分を一切含まず、低刺激性の合成ロジンコンパウンド(ハイドロカーボンなどの合成樹脂)のみで作られています。(出典:ダダリオ オーケストラ 日本公式サイト『アクセサリー』)
特筆すべきは、アレルギー誘発物質を排除しながらも、天然の松脂と全く同じ引っかかり性能(摩擦係数)を分子レベルで見事に再現している点です。過去の代替品に見られた嫌なノイズやベタつきが完全に解消されており、音のまとまりが格段に向上しています。さらに、見た目もガラスのように透き通っていて非常に美しく、ケースを開けるたびにテンションが上がるデザインになっています。価格も2,300円程度と、一般的な高級松脂と同等の手に入れやすい価格帯なのも嬉しいですね。少しでも目や皮膚の痒みに自覚症状がある方は、演奏の質を落とさずに健康を守るため、こうした最新の低刺激性松脂への移行をぜひ検討してみてください。
※アレルギー症状には個人差があります。合成素材であっても、全ての方に絶対にアレルギー反応が出ない(アレルギーフリーである)と保証するものではありません。重度の症状が出る場合や、ご自身の体調に不安がある場合は、無理をせずに必ず専門の医療機関(皮膚科やアレルギー科)にご相談ください。
チェロの松脂の塗り方と日々の手入れ
自分にぴったりの松脂を見つけたら、次はそのポテンシャルを100%引き出し、理想的な音を鳴らすための「正しい塗り方」や、楽器を長持ちさせるための「日々のメンテナンス」についてマスターしていきましょう。ここを丁寧に行うことで、チェロの寿命と響きが全く違ってきますよ。
チェロへの松脂の正しい塗り方
松脂は「ただ弓に擦り付ければいい」というものではありません。塗布量が少なすぎると、弓が弦の上をツルツルと滑ってしまい、中身のないかすれた音しか出ません(いわゆる「音が抜ける」状態ですね)。逆にたくさん塗りすぎると、余分な松脂の粉が弦にこびりつき、弦の自由な振動を物理的に邪魔して音が詰まったり、ザラザラとした耳障りなノイズの大きな原因になってしまいます。適切な量を、均一に乗せることが何よりも重要です。
松脂を塗る際の具体的なステップは以下の通りです。
ダラダラに緩んだ状態や、逆に張りすぎた状態では均等に塗れません。実際に演奏する時と同じ張力にセットします。
弓の毛の根元(手元のフロッグ側)から先端(チップ側)まで、一定の速度と圧力で松脂をスーッと滑らせます。
松脂は、擦り付ける際の「摩擦熱」によって表面がごく微小に溶け、毛のキューティクルにしっかりと付着する性質を持っています。そのため、火起こしのようにシャカシャカと素早く擦るのではなく、ゆっくりと、少しだけ圧力をかけながら塗布するのが最も効率的です。
演奏中にとくに力が入ってよく使用され、かつ松脂が落ちやすい「弓の根元」と「先端」には、往復させて少し念入りに塗布してあげるとバランスが良くなります。
塗り終わった後、弓の毛を指で軽く弾いてみて、白い粉がモワッと雲のように舞い上がるようであれば、それは明らかに「塗りすぎ」のサインです。その場合は、少し弾き込んで余分な粉を落とすか、清潔で乾いた柔らかい布で軽く毛を拭うなどして調整してくださいね。
練習頻度に応じた松脂を塗る回数
松脂を塗る頻度については、練習のスタイルや弓の毛の状態によって大きく変わってきますので、ご自身の状況に合わせて判断することが大切です。
まず、新しく毛替えをした直後の真新しい弓には、松脂が全く付着していません。そのままでは一音も鳴らないため、最初は粉末状に砕いた松脂を毛にすり込んだり、通常よりもかなり多めに(数十往復)塗り込んだりする「下地作り」という特別な処理が必要になります。(工房で毛替えをした場合は、職人さんがこの下地作りを済ませてくれていることが多いです)。
では、日常的な練習においてはどうでしょうか。特に楽器を習い始めたばかりの初級者の方や、部活動などで新しい環境での練習を開始した最初の2週間くらいは、「2日に1度」の頻度で、全体に3〜4往復ほど松脂を塗布するのが十分かつ最適な目安とされています。この頻度をしっかりと守ることで、弓の毛のキューティクルに松脂のベース層が適度に定着し、安定した摩擦力を長期間維持できるようになるんです。
ベースがしっかりと出来上がった中級者以上の方や、毎日長時間練習する方の場合は、毎回弾く前に軽く1〜2往復だけサッと塗る、というスタイルに落ち着くことが多いですね。ご自身の出す音の「引っかかり具合」や「抜け感」に耳を澄ませて、今日の弓にはどれくらい松脂が必要かを見極められるようになれば完璧です。
チェロの松脂の寿命と交換の目安
意外と盲点になりがちなのですが、松脂には「寿命(経年劣化)」が存在します。固まりだから半永久的に使えると思われがちですが、決してそんなことはありません。
松脂を長期間(数年にわたって)使用していると、空気中の酸素や水分と絶えず反応し、表面が酸化して硬化してしまいます。さらに、製造段階で含まれていた微量な揮発性成分やオイルが徐々に抜け落ちてしまうことで、松脂本来の豊かな粘り気や引っかかりの性能が失われていってしまうんです。
使っているうちに松脂の表面がガラスのようにツルツル、テカテカになってしまい、弓の毛に擦り付けても全く粉が付着しなくなった場合は、メンテナンスのサインです。目の細かい紙やすり(400番〜600番程度)を使って、表面を軽く数回削ってあげてください。そうすることで、酸化していない内側の新鮮な層を露出させ、再び弓の毛に乗りやすくすることができます。
しかし、ヤスリで削って新鮮な面を出しても、「なんだか昔より音の立ち上がりが悪くなった」「いくら塗っても音がスカスカする」と明らかに感じるようになった場合は、松脂自体の寿命と判断すべきです。まだ塊が大きく残っていると「もったいない!」という気持ちになるのは痛いほどよく分かりますが、松脂は音のクオリティに直結する心臓部のようなアイテムです。数年に一度は思い切って新しいものに交換することで、見違えるようにチェロの音色が若返るはずですよ。
割れたチェロの松脂を直す再利用法
松脂はその分子構造上、ガラスや飴細工のように非常に脆い性質を持っています。ケースから出し入れする際や、演奏中のちょっとした不注意で床に落としてしまうと、高確率で粉々に割れてしまいます。高級な松脂が割れてしまった時の経済的、そして精神的なショックは計り知れませんよね。
しかし、諦めるのはまだ早いです。松脂が「熱可塑性(熱を加えるとドロドロに溶け、冷やすと再びカチンカチンに固まる性質)」を持つ樹脂であることを利用すれば、ご家庭でも十分に再生・修復することが可能なんです。
※完全に粉末状に砕け散ってしまった場合や、床の広範囲に散乱した場合は、ホコリや微細な砂などの不純物が混入するリスクが高く、それを弓に塗ると毛を傷める原因になるため、潔く諦めて捨てることをおすすめします。
ある程度の大きさの塊に割れた場合は、以下のプロセスで再生に挑戦してみましょう。
湯煎による安全な溶解と型の作り方
松脂の融点は一般的に100度〜120度前後です。絶対に直火にかけてはいけません。引火する危険性が極めて高いですし、急激な温度上昇によって成分が焦げたり酸化したりして完全に劣化してしまいます。必ず、お湯を張った鍋の中で小さな耐熱容器を温める「湯煎(ゆせん)」を利用して、穏やかに熱を加えて溶かしてください。
この再生プロセスにおいて、最も重要で、かつ多くの人が失敗しやすいポイントが「流し込む型の選定」です。溶かした松脂を、金属製の計量カップやガラスの容器に直接流し込んでしまうと、冷却されて固まった後に、熱収縮率の違いから容器の内壁に強固に接着してしまい、二度と取り出せなくなるという悲劇が頻発します。
これを完全に防ぐため、アルミホイルを何重かに重ねて、小さなお椀状の「型」を自作することが強く推奨されます。アルミホイルで作った型であれば、溶けた松脂を流し込んで完全に常温まで冷却し固化した後に、外側のホイルをベリベリと破って簡単に剥がし取ることができるんです。
冷やす際は、室温でゆっくりと自然冷却させてください。早く固めようとして冷蔵庫などに入れると、内部に応力(ひずみ)が発生し、せっかく固まったのに再びピキッとひび割れる原因になります。加熱によって揮発成分が僅かに飛んでしまうため、新品と100%同じ性能に戻るわけではありませんが、日常の練習用としては十分に機能を取り戻してくれますよ。実験みたいで少し楽しい作業ですが、火傷には十分気をつけて自己責任で行ってくださいね。
参考になる動画がありましたので貼っておきます↓
チェロに付いた松脂の正しい落とし方

良い音を出し続けるためには、松脂を塗ることと同じくらい、楽器を総合的にメンテナンスし、清潔に保つ哲学が求められます。
練習でチェロを演奏した後、表板(特に駒の周辺)や弦、そして弓のスティック部分(木の棒の部分)には、白くて細かい松脂の粉が必ず付着しています。これを「少しくらいならいいか」と放置してしまうのは絶対にNGです。放置された松脂の粉は、空気中の湿気をどんどんと吸い込み、やがてチェロのニスに強固にこびりついてしまいます。最悪の場合「サポニフィケーション」と呼ばれる化学変化を引き起こし、ニスを溶かしてしまうこともあるんです。
美観を損ねるだけでなく、こびりついた松脂は表板の木材の微細な振動を物理的に重くして阻害し、音の響きを鈍らせる最大の原因となります。そのため、日々の練習が終わった後には、必ず専用の柔らかなクロス(マイクロファイバークロスなどがおすすめ)を用いて、付着した粉を優しく拭き取ることを基本中の基本のルーティンにしてください。
この際、汚れが落ちないからといって力を入れてゴシゴシと擦ると、摩擦でニスを痛めたり、細かい傷をつけてしまう恐れがあります。あくまで「表面を優しく撫でるように、サッと払う」感覚で拭き取ることが重要です。弦にこびりついた頑固な松脂は、専用のストリングクリーナーを使うのも手ですが、木部には絶対につかないように気をつけてくださいね。
どんなに素晴らしい高級松脂を使っても、土台となる弓の毛が古くてツルツルに摩耗していては、全くその性能を発揮できません。1年〜1年半に一度くらいの頻度で、楽器店や工房にお願いして定期的な弓の毛替えを行うことが、松脂の過剰塗布を防ぎ、常に良い音を保つための秘訣です。
チェロと松脂が作る豊かな音色のまとめ
チェロの松脂の種類や特性、選び方から、正しい塗り方、そして日々のメンテナンス方法まで、かなり深いところまで網羅的にお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
最終的に、楽器の取り扱いやメンテナンスの仕方は、奏でられる「音色」そのものにダイレクトに直結していきます。チェロを丁寧に扱い、細かい状態に気を配ることは、目に見えない「音」を大切に感じることと全く同じ意味を持ちます。チェロをスタンドに置く際の動作一つ、ケースにしまう際の動作一つにまで、その奏者がどのような精神性で楽器に向き合い、どんな音楽を奏でようとしているのかが明確に表れるものなんですね。
数ある種類の中から自分の求める響きに合った松脂を丁寧に選び、適正な量をしっかりと塗り、演奏後には感謝を込めて粉を拭き取る。この一連の行為は、単なる物理的な作業の繰り返しではなく、楽器との対話を深め、より豊かで感動的な音楽表現へと繋がるための、不可欠で素晴らしい基盤づくりなのです。
ぜひ、この記事を参考にしてご自身と楽器にぴったりの松脂を見つけ、チェロの持つ底知れぬ深い響きを心ゆくまで味わってみてくださいね。これから本格的にチェロを始めてみようかなと興味を持っている方や、自分がチェロに向いているのか知りたい方は、こちらのチェロに向いてる人の共通点と始めるためのポイントも合わせて読んでいただくと、さらにイメージが膨らむかなと思います。


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